カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
イラスト/カトリーヌあやこ
漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「名探偵・明智小五郎」(テレビ朝日系 3月30、31日 21:00~)をウォッチした。
* * *
西島秀俊が明智小五郎を演じた2夜連続SPドラマ。舞台を現代に置き換え、最新機器を駆使してサイバー犯罪に挑むとか、英国BBC製作の「SHERLOCK(シャーロック)」あたり狙う気満々、と思いきや。
フタを開けてみれば、「99.9‐刑事専門弁護士‐」(TBS系)などでおなじみ、木村ひさし監督のクセがすごい。謎解きよりも、小ネタ&小ボケの乱れ撃ちだ。
小林少年ならぬ小林中年な伊藤淳史は、何かっつーとカミまくるキャラ。犯人を追いつめる場面でも、「警視庁サイバー捜査しゅえんしゅつ……いや支援室」。必要ですか、その設定。
そんな小ボケポイントではすかさず、すっとこどっこいな効果音が「ポワワ~ン」「ピヨ~ン」「フォッフォッ」と、鳴り響く。
江戸川乱歩だってのに、怪奇もねェ、エロもねェ、妖しいキャラも出て来ねェ。じゃ何があるかってーと、チョワ~ンチョワ~ンと銅鑼の音と共に龍のCGが駆けめぐる(マジで)。
すると明智は青竜刀を振り回し、ブルース・リーばりに「あたたたたたたッ」と奇声をあげ、暴れまくる(マジでマジで)。オラこんな明智いやだ~こんな明智いやだ~。たぶん視聴者そろって吉幾三気分。
だいたい明智の宿敵・怪人二十面相が、このドラマではハッカー集団「ファントム20」だから。20人いるらしいから。なんだそのPTM20。総選挙でセンター決めるのか。握手会でもしたいのか。
舞台が現代ってことだけじゃなく、根こそぎ何かが違う明智シリーズ。考えてみれば、出てくる登場人物がさくっとドラマ「MOZU」シリーズ(TBS系)と、かぶっている。
西島、伊藤をはじめ、明智の妻役も「MOZU」と同じ石田ゆり子。香川照之は今回は警視庁刑事部長役で、生瀬勝久はハッカー黒電話役で登場している。
だったらもう「明智MOZU郎」でいいんじゃないか。ついでに「MOZU」に出てきた長谷川博己演じるとんでもサイコパスキャラ・東和夫こそ、こちらのドラマに出てほしい。
変な能面かぶってクネクネして、「チャオ~」て言いながら、いつもヘリコプターに吊り下げられて去っていく男・チャオ東。このMOZU郎と相対するには、チャオ東くらいのパンチが必要だから、絶対。
※週刊朝日 2019年4月19日号