北海道警察本部が裁判所の令状を取らずに元暴力団員のA被告(46)の車にGPS端末を取り付けた捜査の違法性が争われた裁判で、旭川地方裁判所は3月末、「重大な違法」と断罪。波紋を広げている。問題の事件は2017年4月、北海道旭川市内で起こった。
問題となったのは、A被告の行動を監視するため、北海道警が車に無断で全地球測位システム、GPS端末を取り付けていたこと。
そして、A被告が覚醒剤を隠し持っていたとされる旭川市内の病院の駐車場に無断で、ビデオカメラを設置していた。裁判所は「重要な違法」と断罪したものの、覚醒剤取締法違反の罪に問われたA被告に対しては、「ほかの証拠で犯行は十分に証明できる」と懲役6年、罰金150万円の判決を言い渡した。
警察が「怪しい」と内偵した人物の追跡するため、車などにGPS端末を取り付ける捜査は、これまで全国で明らかになっている。
2017年5月でも、GPS捜査は違法と自動車窃盗事件で被告に一部無罪判決が出されたが、自動車窃盗の大半は有罪とし、懲役4年(求刑懲役6年)を言い渡していた。
2017年以降、GPS捜査の実施は裁判所の令状が必要と最高裁が判断しているが、北海道警は許可をとっていなかった。
公判では、北海道警は2013年5月から約1年間、GPS端末をA被告の車に取り付けていたと証言。GPSによる位置情報取得が1日で100回以上にものぼっていたこと、捜査令状もなく、機器を装着していたこともわかった。GPS端末のバッテリーが数日間で切れてしまうため、定期的に、A被告が借りていた車庫に無断で入り、交換していたことも明らかになった。A被告は、法廷でこう主張していた。
「自分が車で移動すると2~3分で、別の車が追いかけくることが繰り返され、警察がGPS端末つけたのかと疑った」
「運転していると、明らかに警察だと思われる車が真横にきて、私を睨みつけていたこともあった」