歯周病も同じです。「歯ぐきが腫れて痛い」とやってきた患者さんに、いきなり、歯ぐきと歯の隙間の深さを調べる歯周ポケット検査はできません。まずは腫れを落ち着かせるために歯周ポケットの中を洗浄して菌を取り除き、抗生剤を飲んでもらうなどの処置をするのです。そして腫れがひくのを待って、詳しい検査をして、歯周病の原因であるプラークや歯石を取り除く治療をすることになります。

■有名な歯科医師の場合、予約が取れないことも

 人間のからだには自分で病気や傷を修復する自己治癒力があります。適切な処置をした後に安静にしていれば、この自己治癒力が働き、痛みや腫れは自然によくなっていきます。
症状がおさまると、気分も体調もよくなっていきます。この段階で次の治療をおこなうほうが効果もより高まり、患者さんにとってメリットが大きいのです。

 ただし、海外に出張予定などがあり、治療が途切れてしまいそうな場合は早めに相談してください。すべての治療を前倒しで行うことはできませんが、「ここまでやっておけばしばらくは受診しなくても大丈夫」というところまで、対処することは可能です。そのために、短期間で複数回の予約を取ることはたいていの歯科医院で可能なはずです。

(3)の予約が取れない、という理由についてですが、確かに有名な歯科医師の場合、そのようなことがあります。1人の歯科医師でやっている歯科医院も予約が取りにくいでしょう。

 では、歯科医師がたくさん勤務しており、歯科医師を担当制にしていないクリニックはどうか。確かにこちらは予約が取りやすいですが、歯科医師がしょっちゅう変わることがあり、あまりおすすめできません。

 前回の治療を別の歯科医師が引き継ぐ場合、顔を合わせて引き継ぎをすることは基本的になく、カルテから治療内容を判断して引き継ぐことが一般的だからです。

 当然、細かいニュアンスまでは伝わりません。このため、歯周病が進んでいる歯を当初は残す予定だったのが、いつの間にか、抜歯になってしまった、ということも起こり得ます。

 早く治したいからといって、「焦りは禁物」ということです。

◯若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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