歯科医院に通う人はたいてい、「忙しいから、さっさと予約を取って、できるだけ早く通院を終わらせたい」と考えるもの。でも、たいていの場合、予約は数日から1週間くらい先に。なぜ、歯科医院では次の日に予約ができないのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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翌日に予約が取れない代表的な理由は主に次のようなものがあります。
(1) つめものやかぶせものなど、補綴(ほてつ)物の完成待ち
(2) 痛みや腫れなどの症状が強く、落ち着くまで次の治療ができない
(3) 歯科医院の予約がいっぱい
(1)については多くの人が納得する理由でしょう。補綴物を歯科技工士に作ってもらうためには一定の日数が必要です。
意外に理解されていないのは(2)の場合でしょう。これは歯科医師としてもぜひ、患者さんに知っていただきたい点です。
具体的にどういうことなのか説明していきます。まず、歯科医院に行く理由の多くは、痛みや歯ぐきの腫れなどがあり、我慢ができなくなったから、だと思います。(2)に相当するのはこうした患者さんのケースです。
痛みや腫れで受診をした場合、初診ではまず、症状をやわらげることが一番の治療目標になります。捻挫などで痛みが出たらまずは冷やしたり、湿布や鎮痛薬を使いますが、それと同じです。
例えばむし歯で激しい痛みが出ている場合、神経に炎症が起こり神経が死んでしまったあとに、膿がたまって内圧が高まり痛みの原因となっていることが多いので、治療では歯の一部に穴を開け、これらを排出させる処置をします。
続いて、神経を取り除く処置や削った後の土台作り、さらに補綴物をかぶせるなどの処置が必要ですが、痛みや腫れがおさまっていないときにはできません。
傷が治っていないところをさらに刺激するようなもので、患者さんにとってもつらいのはもちろん、痛みを抑えるために麻酔をうってもなかなか効かないこともあります。このため、次の予約日は痛みが落ち着き、腫れがひく数日後にしか設定できないのです。