
ニューヨークの音楽シーンは、注目の有無にかかわらず、およそ20年にわたりオーネット・コールマン、セシル・テイラー、ジョン・コルトレーンのような先駆者の伝統を受け継ぎつつも独創的で斬新な音楽を生み出してきた。
1990年代を迎えると、フリー・ジャズは、従来のジャズ・ファンではなくロックのリスナーという新しい支持層を開拓し、ロック・ファンにニューヨークとその周辺で創造される、きわめてエネルギッシュな音楽を提供した。
そして、この新しい聴衆の関心と支持によって活性化されたフリー・ジャズは、いままさにルネッサンスの最中にある。
本書『ニューヨーク・イズ・ナウ』は、そのルネッサンスを情熱的に捉えている。
著者フィル・フリーマンは、フリー・ジャズのプレイヤーを取り巻く音楽シーン、彼らのライヴ・パフォーマンス、さらには彼らのアルバムをリリースするインディペンデント・レーベルやジャズ誌よりも情報量の多いロック誌を探り、フリー・ジャズの全貌をあきらかにする。
著者は、60年代ではなく90年代以後のフリー・ジャズをテーマに、フリー・ジャズが“異端のジャズ”から“メインストリームのジャズ”に匹敵する存在へと、また独自に発展しうる様式へと変貌した経緯を、ミュージシャン自身の証言もまじえて検証する。
●本書に寄せられた言葉
ジャズ界はかなり長い間、その想定を吟味する必要があった。この本は、その手はじめになる。フィル・フリーマンの指摘には、激しく異議を唱えうる部分もあるが、それにしても非常に刺激的な一冊だ。『ニューヨーク・イズ・ナウ』は必ず、今後のモダン・ジャズ論に不可欠な要素になるだろう。
マシュー・シップ(ミュージシャン、バンドリーダー、『ブルー・シリーズ』のディレクター)
フィル・フリーマンのテーマに対する限りない熱狂こそが、彼と、感覚が麻痺したジャズ通との違いだ。彼は、反逆のジャズを冷徹な知識人の領域から取り出し、音楽を強烈に反映させる生々しい情熱を吹き込んでいる。
ジェイスン・ペティグルー(オルタナティヴ・プレス記者)
●著者紹介
フリーランスの音楽評論家。『アクアリアン・ウィークリー』『オルタナティヴ・プレス』『マグネット』『ジャズィズ』『ジャガーノート』『メタル・ハマー』などに寄稿。ニュージャージー州エリザベス在住。
(訳:中山啓子)