田島貴男のソロ・ユニット、オリジナル・ラブの新作『bless You!』が素晴らしい。傑作『風の歌を聴け』(1994年)や前作『ラヴァーマン』(2015年)を“進化”、さらには“深化”させ、最高の出来栄えになっている。
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田島は66年生まれ。中学時代にパンク/ニューウェイヴに目覚めたが、大学入学後、パンクの衰退をきっかけに多様なロックやソウル・ミュージックに興味の幅を広げた。
自作デモは100~200曲にのぼり、それらをバンドで演奏するために友人と3人でレッドカーテンを結成。ギタリスト1人を追加し、87年にオリジナル・ラブと改名した。
田島はピチカート・ファイヴにも誘われ、オリジナル・ラブの活動と並行してアルバム制作にも参加したが、90年からはオリジナル・ラブに専念。翌年に『LOVE! LOVE! & LOVE!』でアルバムデビューした。
93年に出した5作目のシングル「接吻 kiss」がヒット。次いで発表した『風の歌を聴け』はアルバム・チャートの1位にランクされた。メンバーの離脱を経て、95年からは田島のソロ・ユニットとして継続。シングルやアルバムをコンスタントに発表し、ライヴにも取り組んできた。
田島は近年、ブルース、ジャズへの傾倒も深め、ジャズ・ギターの理論や技術を学ぶことに心を砕いた。若手との交流イベント「Love Jam」も主催。そこで親しくなったミュージシャンが新作にも参加している。
今回の『bless You!』のテーマは“人生賛歌”。昨年の母の死をきっかけに、生や死について自問するようになったという。
収録曲には、現在のツアー・メンバーの小松シゲル(ドラムス)、村田シゲ(ベース)、木暮晋也(ギター)、冨田謙(キーボード)、真城めぐみ(コーラス)も参加している。
1曲目の「アクロバットたちよ」には、彼らの名が編曲のクレジットに並ぶ。田島の憂いのあるギターの弾き語りに始まり、ツェッペリン風の強靭なハード・ロック、ポップなスタイルへと変化を見せる。演奏も歌も“一発録り”だ。これのみならず、本作の大半が一発録り。70年代のレコードがもたらす緊張感を取り込みたかったという。
「ゼロセット」はソウル・ベースのリズミカルなナンバーだ。豪快なグルーヴ、サビのポップなメロディーが光る。田島の明快な歌唱にも魅せられる。ストリングスもフィーチャーされ、フィラデルフィア・ソウル風な趣に。そこに長岡亮介のカントリー・テイストのギターが絶妙に絡む。