「僕は京都に住んでいるんですけど、まだ格安航空もない頃なんで夜行バスで往復しました」
11年夏。祖母が腸捻転症で倒れた。手術の後、家に戻ったが、日に日に体が弱っていった。「ばあちゃんは僕が面倒をみる」と大学生になっていた大輝さんが懸命に看病を続けた。
14年2月。大輝さんが失踪した。「本には入れてませんが、ばあちゃんが一人で待っているところも撮ってはいるんです」
約1年後、山で遺体が見つかった。なぜ従弟は自死を選んだのか。考えこむ毎日だったという。16年11月、祖母も永眠。88歳だった。
タイトルは「二人の不在」を意味する英語だ。豊かで楽しげな時間がつまった写真に説明はない。巻末には二人のことを綴った長文のエッセイが載せられている。「かなしい出来事ではあるけれど、二人には幸せな時間があった。そちらに光をあてれば、大輝の生きた証しにもなると思いました」
(朝山実)
※週刊朝日 2019年3月1日号