うな重といえば粉末の山椒(さんしょう)。上品な香りとピリリとした感覚が食欲をそそる。その山椒のほか、中国・四川の調味料で麻婆豆腐などに使われる花椒(ホアジャオ)といった“しびれる”調味料がブームだ。
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スパイス業界大手のエスビー食品によると、山椒、花椒、花椒塩の市場はここ数年拡大し、直近は伸びが加速している。昨年の販売額は市場全体で前年比21%増、17商品を扱う同社でも17%増で、同社の花椒は26%増となった。相次ぐ商品投入がブームに火をつけているようだ。
ネット通販サイトを運営する楽天によると、2016~18年の「花椒」(商品名に花椒やホアジャオを含む)の取り扱いは2.8倍に拡大している。楽天サイトの山椒、花椒の商品レビューを見ると、ある粉末タイプの山椒について、40代の女性は「テレビで身体を温める効果があると知り、寒がりの主人へ。山椒が好きなので喜んでかけて食べています。とても香りがいいです」とコメント。四川赤山椒について50代の女性は「鶏肉に、この花山椒!唐揚げ最高~! 本当に美味しかったです!」。
楽天サイトの1月21~27日の山椒・花椒ランキングは1位がみかん梅干し紀伊国屋文左衛門本舗の「冷凍生山椒」、2位がケンコーコムの「ギャバン グルメミル 四川赤山椒入」、3位は、にっぽん津々浦々の「飛騨山椒 山椒粉」などとなっている。
しびれブームについて、リクルートライフスタイルが運営するホットペッパーグルメ外食総研の有木真理・上席研究員はこう分析する。
「ストレスの多い社会で激辛ブームが起こり、最近は超激辛へと、より強い刺激を求めている。一方で、辛みにもバラエティーが増え、花椒や山椒のように香りやしびれを楽しむ嗜好もあり、女性を中心に幅広い層に人気がある」
山椒は上品に楽しむ傾向があったが、有木さんによると、最近は大胆に楽しむ傾向にあり、チョコやフレンチ料理、すき焼きにまで山椒を添える。こうした意外性はトレンドに敏感な女性が求めがちだという。
さわやかな香りのある“しびれ”はブームに終わらず、砂糖や塩とは異なる「第2の調味料」として定着する! スパイス業界はそう願っているだろう。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2019年2月15日号