──でも会社経営って大変ですよ
起業当時、社員はゼロでした。2004年に社員が入社し何年か経った時「社員にも家族がいるし、起業したからには簡単に辞められない」って気づいたの。そこから、まじめに経営の勉強を始めました。今年で会社は20年目、社員は22人に増えました。うちの場合、約50の言語を扱っていて登録翻訳者は700人以上いますが、9割が女性。時間に縛られず、フリーランスで働きたいという人が、女性には多いですね。
──14年には障害者をサポートする会社も設立しています
12年に制度が変わり、社会福祉法人にしかできなかったサポートが株式会社もできるようになった。じゃあ、やってみようかなと。出身地の厚木で障害のある子どもたち専用の放課後等デイサービスを二つ運営しています。実は今、障害者のグループホームを運営しようと準備を進めています。対象は発達障害とか精神障害とかを持ちながら働いている大人の障害者たち。一軒家のシェアハウスみたいな形で、ケアも提供していきたいと思っています。
──新たに大人の支援も始める?
10年20年経てば、子どもも大人になる。その人たちの将来はどこ?って考えた時に、親亡き後の終の棲家をつくらなきゃと。障害者という枠組みにとらわれているわけではなく、困っている人に目を向けたい。私には「目の前の困った人を助けたい」というお節介精神があるのね。今でも覚えているけれど、中学2年の時に電話帳で養護施設を調べて電話をし「何か必要なものはありませんか?」って聞いたら「砂糖です」って言われた覚えがある。
──山下さんに定年はありませんが、この先はどう生きたい?
今年、59歳。10年経ったら70歳近いわけで、そこから何かやろうと思っても体力的にも気力の面でも難しくなります。10年の間に、まずは事業承継を考えなきゃならない。人を雇っている以上、「私は辞めるから、会社も解散」ってわけにはいきませんから。その道筋を付けたら、シニア海外協力隊に行きたい。行くならアジアかアフリカかな。技術はないけれど、中小企業の経営ならお手伝いができるかもしれない。家族などのしがらみからも離れて、最期は誰にも看取られずに海外で終わってもいいやと思っています。
(構成/ライター・熊谷わこ)
※週刊朝日 2019年2月1日号