JR東海が損害賠償を求めた訴訟が開かれた最高裁第三小法廷 (c)朝日新聞社
JR東海が損害賠償を求めた訴訟が開かれた最高裁第三小法廷 (c)朝日新聞社
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認知症の男性が列車にはねられた愛知県大府市の現場 (c)朝日新聞社
認知症の男性が列車にはねられた愛知県大府市の現場 (c)朝日新聞社
(週刊朝日 2018年2月1日号より)
(週刊朝日 2018年2月1日号より)

 自分の親など身近に認知症の人がいれば、介護の心配がつきない。と同時に忘れてはいけないのが、損害賠償の可能性だ。知らない間に外出して、他人にケガをさせたり、モノを傷つけたりしないかなど、気の休まる暇がない。そんな心配を軽減させる制度が、全国で広がり始めている。

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 神戸市は2019年から、自治体として独自の支援制度(神戸モデル)を始める。

 認知症の早期発見と認知症の人の事故救済が2本柱。1月28日から市内の65歳以上の高齢者に対して、認知症の疑いの有無を検診するための診断助成制度を設ける。疑いがあれば専門医が精密検査し、病名を診断。市民の検査費用負担はない。

 4月には新たな事故救済制度を始める。認知症の人を対象に、市が賠償責任保険に加入。認知症の人や家族が損害賠償請求された場合、保険会社から最高2億円が支払われる。

 認知症の人が起こした損害の被害者に対しては、責任をだれにも問えない場合でも、火災や傷害などの事故について最高3千万円の見舞金が給付される。

 制度運営に必要な財源は、市民に超過課税として市民税を年400円負担してもらうことで賄う。現状の限られた財源で実現しようとすれば、負担を将来世代へと先送りすることになるためだ。

 市は17~18年度に有識者会議などで制度を検討。その内容を盛り込んだ「認知症の人にやさしいまちづくり条例」改正案が18年末に市議会で可決された。制度はこの条例に基づいている。

 保険はMS&ADグループの三井住友海上火災保険が引き受ける。大手損保4社の入札で、同社が最も高い評価を受けた。公務開発部開発室長の石井昇氏は「損害賠償責任をだれにも問えない場合、つまり被害者はいるが加害者がいない場合でも、被害者を一定程度救済できる」と意義を語る。

 こうした制度が生まれる転機の一つが、07年に愛知県大府市で発生した鉄道事故。認知症で外出していた男性(当時91)が線路内に誤って入り、電車にはねられて亡くなった。悲しみに暮れる遺族に追い打ちをかけるように、JR東海が遺族の監督義務を問う。電車遅延の損害720万円の賠償請求を起こした。

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