●マイルスに愛され、ウディ・ハーマンとも共演した伝説のギタリスト
マイケル・ブルームフィールドは1981年2月15日、サンフランシスコのわき道に停められた車の中で死体となって発見された。通報により警察が出動し、遺体は身元不明のまま、死体公示所にしばらく安置されることになる。
全世代の音楽ファンやギタリストの認識を一変させた世界的なブルースマンの波乱に富んだ人生は、こうしてピリオドが打たれた。享年37歳だった。
本書は、1960年代を代表するギタリストに数えられ、きわめて才能があり、カリスマ性を放ち、大きな影響を及ぼしたマイケル・ブルームフィールドの人生の光と影を辿る。
裕福な家庭に生まれたものの、父親の理解が得られず、躁鬱病に苦しんだブルームフィールドではあるが、音楽に関するかぎり、輝かしい栄光を勝ち取り、生前には数多くのゴールド・レコード、死後にはブルース・ファウンデーション・ホール・オブ・フェイムという名誉を手にする。
●音楽活動と私生活
サブ・タイトルが物語るように、本書は、ブルームフィールド本人、彼の家族、友人、仕事を共にした音楽関係者に対して行なわれた、きめ細かい踏み込んだインタヴューに基づく口述の伝記であり、彼の短い生涯、成功や特異性を詳述する。
そして同時に、60年代の文化における画期的な出来事をかいま見せる。たとえば、ブルームフィールドが初めてレギュラー・メンバーとして活動したポール・バターフィールド・ブルース・バンドといったグループによる“白人のブルース・ムーヴメント”、若い白人のブルース・プレイヤーと年長の黒人ブルースメンの間に存在した“特殊な絆”、あるいは、ボブ・ディランがニューポート・フォーク・フェスティヴァルのステージに立ち(ブルームフィールドはディランのバック・バンドのリード・ギタリストとして出演)、「エレクトリックに転向した」とき、フォーク・シンガー界に噴出した“純粋主義者と改革派の対立”、ホーンをフィーチャーするブルース・ロック・バンドの先駆け、ブルームフィールドのエレクトリック・フロッグが与えた“強烈なインパクト”、さらにはアル・クーパーのアルバム『スーパー・セッション』において、ブルームフィールドがマジックを発動したこともあり、センセーションを巻き起こした“スーパー・グループの威力”というように。
また本書は、1970年代後期に陥ったブルームフィールドの音楽活動と私生活の両面にわたるスランプをあきらかにする。それは、彼の悲劇的で謎めいたドラッグがらみの死去という結末を迎えた。
本書『マイケル・ブルームフィールド:イフ・ユー・ラヴ・ディーズ・ブルーズ/アン・オーラル・ヒストリー』は、未発表演奏を収録したCD,貴重な写真、重要なディスコグラフィーをも添え、彼が、“あたかも異次元から舞い降りたかのように”ブルースを演奏した“偉人”であることを読者に知らしめることだろう。