漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」(フジテレビ系 1月6日21:00~)をウォッチした。
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その経歴、絶対嘘ですよね。てな、うさんくさい正体不明のイケメンをやらせたら、日本一。俳優界のショーンK(成立してるのか、この例え)ことディーン・フジオカなのだ。
考えてみれば、出世作「あさが来た」の五代友厚も、いきなり炭鉱に馬で駆けつけ、人妻に「ファーストピングィン(ペンギン)」などと囁きかける謎の男。
こいつが、実はモンテ・クリスト伯ですと、言われても納得だ。そんなおディーン様の正体不明シリーズ最新作がこのドラマ。
「巌窟王」(「モンテ・クリスト伯‐華麗なる復讐‐」、フジテレビ系)のお次は、「あゝ無情」なんである。
まず、おディーン様の役名がいい。馬場純。斎藤刑事(井浦新)が、その名前をやたら連呼する。
「馬場純! 馬場純はどこだ!? なぜだ、馬場純!」
これはアレですよね。ババジュンじゃん、ババジャンじゃん、ジャン・ヴァルジャン?みたいな。潜在意識に訴える何か。
「世界的名作が今よみがえる」なんて煽っていたけど、いつまでたっても銀の食器は盗まれない。正当防衛で人(斎藤刑事の父)を殺(あや)めてしまった馬場純少年(吉沢亮)は、危篤の弟に会うため脱走。
その後、阪神・淡路大震災が発生する。瓦礫の下敷きになった親友・拓海(村上虹郎)に保険証を託された純は、彼に成り代わって生きることを決意する。
誰も歌い出さないし、そもそも舞台が全然違うけど、弁護士となったおディーン様が仮面生活を送るだけで、純がジャンで、すべてがミゼラブル。
そして、実の娘のように育ててきた梢(清原果耶)のために、真実を明らかにする馬場純。彼を追い続けた斎藤刑事が、言い放つ。
「平成31年1月6日、馬場純逮捕」
もう、このクライマックスでみんな思ったね、次のセリフ。「そして、釈放だ」だろうと。ついこの前、斎藤刑事は、おディーン様に命を救われてたしね。
さぁ、逮捕からの釈放だ。ところがだ、全然釈放されないまま、エンドロール流れる流れる。
おいおい、このまま終わりなの? これがほんとの「あゝ無情」。って、そんなうまくもないわーい、ガシャーン(ちゃぶ台ひっくり返す音)。世界の正体不明シリーズは、どうぞこれからも続けてください。
※週刊朝日 2019年1月25日号