人口10万人超の都市部、人口5千~1万5千人の田舎町、人口5千人未満の農村部に分けて、住民の住宅所有や失業状況、世帯収入や教育、人種・民族的多様性などのデータを調べた。その結果に彼女は驚かされたという。教育を除く大半の指標で、田舎町や農村部の中央値は都市部と同等か、それを上回っていたのだ。
調査対象となった45州のうち28州で、年収1万ドル未満の極度の貧困世帯の割合は田舎町のほうが都市部よりも低く、また失業率でも40の州で田舎町のほうが都市部よりも低かった。一方、都市部のほうが田舎町や農村部よりも高かったのは、大学卒業者の割合くらいだという。
つまり、世帯収入や失業率、格差などの経済的状況を比べたところで、都市部と地方との間に著しい違いがあるわけではなかった。にもかかわらず、都市部の金持ちエリート対地方の貧しい労働者という間違ったステレオタイプに基づいて米国が二分され、「ありもしない分断」が作り上げられているとハルケット教授は指摘する。
もちろん、農村部に貧困、失業、格差に苦しむ労働者がいることは確かだ。しかしそうした問題は、都市部も同様に抱えているのである。
問題は都市部のエリートと田舎の労働者の対立ではない。アマゾンやネットフリックス、あるいはソーシャルメディアの普及で都市と地方の文化格差は縮まっている。米国社会の本当の分断の種は、ウェブにこそあるのかもしれない。
※週刊朝日 2019年1月25日号