X線で、すりガラスのように淡い影が見えることから「すりガラス様陰影」と呼ばれるごく早期のがんや、2センチ以下で悪性度の低いがんでは、縮小手術でも肺葉切除術と同等の治療効果がみられることがある。現在、肺葉切除術と縮小手術での治療効果(予後や術後の肺機能)を比較する試験がおこなわれており、将来的に、早期がんに対しては縮小手術が標準治療になる可能性もある。

 がんが大きい場合は、片方の肺をすべて切除する「肺全摘術」をおこなう。肺の半分を切除することにより、術後は呼吸機能の低下が危惧されるため、そのリスクを回避するために、がんを切除した後に残った気管支を縫合してつなぎ合わせる「気管支形成術」をおこなうこともある。ただし、高度な技術を要するため、どこでも受けられる手術ではない。また、がんが肺の外にまで広がっている場合は、肺に加えて胸膜や肋骨など、肺の周囲の臓器も切除する「拡大手術」をおこなうこともある。

 切除する範囲が広いほど術後の呼吸機能は低下するため、できるだけ肺を残すことが理想だ。しかし、そのせいでがんの取り残しがあっては元も子もない。切除範囲は、「がんの根治」と術後の生活や仕事復帰など患者の「QOLの維持」の両立をめざして検討する。

【ここがポイント】
・ステージIの早期がんでは手術で完治する人が80%以上
・がんのある肺葉ごと切り取る肺葉切除術が標準治療
・がんの根治と術後のQOL維持の両立をめざして切除範囲を検討

◯監修
順天堂大学順天堂医院呼吸器外科教授
鈴木健司 医師

(文/出村真理子)

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ