作家・北原みのり氏の連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回はフランスの男女平等政策と日本の違いについて。
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気軽に引き受けた仕事で、本来なら2、3日で仕上げなくてはいけないものに、一月もかかってしまった。新年早々「ごめんなさい」気分である。
フランスの男女平等に関する最新の政策提案を読み、原稿用紙3枚程度にまとめる……というもので、もちろん日本語に訳されているし、難解なものではない。それなのに締め切りを全く守れなかったのは、刺激が強すぎたからなのだと思う。
フランスの男女平等政策が、日本に暮らす女としてはファンタジーそのもの。夢物語過ぎて現実感がないのだ。そのギャップに圧倒され、心ざわつき、簡単に要約できなかった。
具体的には、女男平等政策推進のための監視・諮問機関である、フランス共和国女男平等高等評議会(HCE)が発表した「女性に対するオンライン暴力の不処罰を根絶する:被害者の緊急な要求」という政策提案資料だ。
もうね、タイトルだけで軽く一旦つまずいた。そもそも「女男平等」という言葉が、私のパソコンでは変換されない。じょなんと入れれば、「女難」にしかならないフツーの日本語頭脳パソコンだ。考えてみれば「男女」という言葉自体が、男が先・女が後、という慣習が生んだだけで、意味なしだよね、と気がつかされるが、じゃあ「女男」でいいじゃん!とはならないのが日本社会。とたんに「男女平等」というフェミにとって重要な四文字が、とても古典的な言葉に思えてきて調子が狂うのである。
ちなみにHCEは、日本の内閣官房長官が議長を務める「男女共同参画会議」に相当するという。「男女平等」という言葉すら敬遠するこの機関は、官房長官に大臣12人と有識者12人で構成されるが、現在、女性大臣は片山さつき氏だけだ。また性別役割分業を積極的に肯定する「日本会議」のメンバーや、フェミ嫌いで有名な有識者も入っている。メンバーの顔ぶれや女性の少なさから、日本のHCEは男女平等が行き過ぎないように監視する組織のようにしか見えない。