平成皇室の30年が終わりに近づき、皇室のあり方などが議論されている。歴史から皇室のあり方を読み解くノンフィクション作家の保阪正康氏と、宮内庁取材の第一人者である元朝日新聞編集委員の岩井克己氏は、歴史の重みが継がれていくのか語り合った。
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■過去の歴史の重みはどのように引き継がれるのか
岩井:保阪さんは昭和史の第一人者として、昭和の歴史、平成の歴史、その中で皇室についていろいろと取材し、関係者の証言を積み重ねてこられました。皇室側が歴史を正しく継承しなければならないと、皇太子家も秋篠宮家も子どもたちに聞かせたり体験させたりしてらっしゃるが、こういう言い方をする人もいる。「今の天皇はトランジットエンペラーだから昭和の負の遺産を清算するんだ。そして次の世代は明るい屈託のない皇室であってほしい」と。ですが、そんな軽いものではなく、過去にこんな重いことがあったのだ、という事実を引き継がなければ皇室は成り立たない。そんな思いもあります。ですが、そもそも引き継ぐことが可能なのでしょうか。
保阪:今の天皇は当然引き継いでいる。記者会見で「私は昭和天皇の言うことがわかるようになりました」と述べていた。
今の天皇は自らにも、天皇の名前や地位、それ自体のなかにも戦争に伴う責任があるのだと、直接、間接を問わず、思っているでしょう。やはりあの名前において、何百万人も死んだ。直接命令したわけではなくとも、歴史的史実に対し、父親である昭和天皇が責任を背負い込むのと同じように、今の天皇も感じていると思うんですよ。
岩井:両陛下がそうした問題について、自らができることは何だろうと日夜考え続けるのは本当に大変なことです。ましてや死者たちの記憶を胸にとどめることがいかに大変なことか、察するにあまりあります。