建設機械メーカー「コマツ」のショベルカー。情報通信技術を活用した新しいサービスを提案している (c)朝日新聞社
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 (週刊朝日 2019年1月18日号より)
 (週刊朝日 2019年1月18日号より)
藤原洋氏
藤原洋氏

 昨年末の株価急落で景気悪化の不安を抱いた人も多いことだろう。先行き不透明な日本経済は今後どうなるのか。本誌は「全産業のデジタル化」に注目した“最強シナリオ”をお届けする。

【図】IoTによる「全産業のデジタル化」で新しい産業が生まれる

IT関連企業「ブロードバンドタワー」の藤原洋・会長兼社長は、「日本経済にはまだ成長の余地がある」と強調する。理系出身の博士号を持つ経営者で、複数の大学で教えたこともある。

「『全産業のデジタル化』が進めば、日本のGDPは30年に現在の2倍にあたる1千兆円に到達することも可能です」

 経済全体の規模が10年で2倍になるというのは、ずいぶん景気のいい話だ。日本は低成長が当たり前になり、名目GDPは1990年代半ば以降ほぼ横ばい。国際通貨基金(IMF)のデータを基に95年と2017年の名目GDP(米ドル換算)を比べると、米国が約2.6倍、中国が約16.3倍に伸びた一方で、日本は約1割減。そんな“負け組”の日本を復活させる「全産業のデジタル化」とはどういうものか。

「あらゆるモノがネットにつながる『IoT』(インターネット・オブ・シングス)をはじめ、ビッグデータや人工知能(AI)などの技術が進展します。これから『第4次産業革命』とも言うべき大きな産業構造の変化が起きます。デジタル技術の応用が、一部の産業や業務部門だけでなく、すべての分野で進む。日本は情報通信関連を除くと、ほとんどの産業でデジタル化が進んでいません。それだけに、生活や社会に与えるインパクトは大きい」(藤原氏)

 産業構造が変わる時には鉄道や自動車など新しい産業が生まれる。「第4次産業革命」では、私たちの想像もつかないビジネスが生まれるかもしれない。

 藤原氏は、デジタル化の進んだ産業は急成長しているとも訴える。例えば情報通信産業の市場規模は、85年の40兆円から13年の100兆円へと2.5倍に伸びた。ほかの産業でもデジタル化によって同様の成長が期待できるという。特に金融や電力、医療など、生活に密接し規模の大きな産業が有望分野だ。

 例えば医療では、患者の病状や診察、検査履歴などをデータ化した電子カルテの標準化はこれから。現状では病院ごとに診察券をつくったり、病院を変えるたびに問診を繰り返したりする必要がある。医師や看護師らの人手不足が指摘されているにもかかわらず、現場にはムダが多い。

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