競争の激しい美容室業界(iStock / ゲッティイメージズ)
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 美容室へ行くのにホットペッパーなどの無料配布の雑誌に掲載されたクーポン割引を利用する女性は少なくない。都内在住で30代の自営業の女性はこう話す。

「お店による技術の違いがよくわからないので、いつもクーポンの使えるお店を選んでいます。同じお店のクーポンは一度しか使えず、自宅沿線のお店はほぼ回ったので、これからは少し離れたところのお店に行くことにしています」

 こうしたタイプの顧客は飲食店などにもいて「バーゲンハンター」と呼ばれる。店側は固定客獲得を目指していたが、資金を回収できず、苦しい状況になっていたところもあるという。3年ぐらい前までかなりあった話で、最近の消費者は節約志向が一段と強く、10分のカットで1000円のQBハウスや白髪染め専門の激安サロンなど超激安店に流れていると業界関係者はいう。

 美容室(美容所)は厚生労働省の統計によると、いまや24万7578店舗(2017年度)と、この10年間で12%近くも増え、クーポン割引が続出するほど過当競争になっている。国内コンビニエンスストアの大手7社の5万5564店舗の数倍の規模だ。

 信用調査会社の東京商工リサーチによると、今年の美容室の倒産は11月までで86件と過去最多となりそうなペースという。情報部の関雅史氏は美容室の店舗数について、免許を持った美容師がいる必要があるが、廃業届を出さないケースもあると話しており、統計の数値は実態よりも多くなっている可能性を指摘する。

 美容室の経営は年収1000万円以上の顧客層を獲得できるかがポイントになるというのは、日本美容協会の吉田房子代表理事。

「年収が1000万円を下回る層では購買力や美意識が全体的に低下しており、定期的に美容にお金をかけるのが難しくなっています。洋服もユニクロなどのファーストファッションが主流です」

 市場調査会社の矢野経済研究所によると、事業者売上高ベースでみた美容市場は2017年度で1兆5103億円と、ここ数年は減少傾向。2018年度も1兆5049億円に減少すると予想している。顧客の高齢化や来店頻度の長期化、低価格サロンチェーン台頭などが背景にあるとみている。中高価格帯の付加価値型サロンでは値上げ派と値下げ派の2極化が進行すると予想する。

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