週末の朝寝坊により、週明けに時差ぼけ症状がおこることがある。この状態が続くと単なる睡眠習慣の乱れにとどまらず、心身のさまざまな不調を招くおそれがあることが明らかになってきた。「社会的ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれる。年末年始は生活のリズムが乱れ、朝寝坊が続くことも多いことから、社会的ジェットラグに対する要警戒期間でもある。どのような不調と関連しているのか、時間生物学が専門の明治薬科大学リベラルアーツ准教授・駒田陽子氏に話を聞いた。
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平日の睡眠不足の影響もあって週末に朝寝坊、いわゆる寝だめをした結果、「休み明けの朝、起きるのがつらい」「夜、なかなか寝つけない」「寝ても疲れがとれない」といった不調を感じたことはないでしょうか。
体内時計によるからだの時間と、私たちが生活の基準にしている社会的な時間とのズレから、社会的ジェットラグは生じます。国内にいながら、心身が時差ぼけ状態になる場合があるということです。
通常はこのズレを朝の光でリセットしているものの、朝寝坊で光を浴びずにいると、朝はからだを活発に動かし、夜はリラックスして眠るという、生活のリズムをつくるはたらきが機能しなくなってしまいます。
この結果、仕事のパフォーマンス(効率)にも影響します。金曜の夜と土曜の夜に好きなだけ寝た週末朝寝坊グループと、平日と同じように起きたグループの、週明けの眠気度や疲労度を比較した海外の研究があります。この研究では、週明けの眠気度も疲労度も週末朝寝坊グループのほうが強く、その影響は水曜日ごろまで続いたことが明らかになっています。ちょっと朝寝坊のつもりが、翌週の前半の仕事を台無しにしてしまうおそれがある、ということです。
社会的ジェットラグは、平日の睡眠時間の中央時刻(0時から6時まで寝たら3時)と、朝寝坊したときの睡眠時間の中央時刻の差が目安になります。私たちの調査では、この時差が1時間未満にとどまっているのは約60%で、1~2時間の人が28.5%、2~3時間の人が8.6%、という結果でした。