西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「ホメオスターシス」。
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【ポイント】
(1)ホメオスターシスに関与する自律神経
(2)自律神経がアンバランスになりがち
(3)ホメオスターシスを取り戻そう
ホメオスターシスという言葉をご存知でしょうか。英語ではhomeostasis、邦訳すれば恒常性です。米国の生理学者W・B・キャノンによって1932年に提唱された考え方です。
猛暑のなかでも厳寒のなかでも、あるいは飢餓状態にあっても脱水状態にあっても、また精神的なストレスにさらされようとも、正常な安定した範囲に保つ生体の性質をホメオスターシスといいます。この能力なしに、生体は生命を維持することができません。
このホメオスターシスには、主に自律神経系と内分泌系が関与しています。
自律神経系は各種の内臓や血管などに広く分布しています。この神経を通じて、不随意的に各内臓を調整することができるのです。つまり、いちいち胃腸を動かそうと考えなくても、食べ物が入ってくれば、それに対応して自然に胃と腸が動くようになっているのです。
この自律神経系をさらにくわしく見ると、交感神経系と副交感神経系で成り立っています。この二つの神経系は原則的に反対の働きをするのです。
例えば、心臓の働きは交感神経によって促進され、副交感神経によって抑制されます。血管は前者によって収縮し、後者によって拡張。腸の運動は前者によって弱まり、後者によって強まるといった具合です。
この拮抗する二つの神経系のバランスによって、ホメオスターシスが保たれる仕組みなのです。
どちらの神経が優位に働くかは、精神状態も影響します。病院の道場で朝、気功を行うのですが、参加者が気功を始める前に心をしずめると、腹が鳴り出すことが多いのです。これは心の落ち着きが副交感神経を優位にしているからです。