このにおいが出ているかどうかを自分でチェックする方法として簡便なのがコップやビニール袋(ただしにおいのついていないもの)の中に息を吐き、それをかぐ方法です。
はーっと吐いたら一度、手のひらなどでふたをします。一度、深呼吸をしてから、鼻を近づけ、そっとかぎます(順応反応を起こさせないようにするためです)。このほか、デンタルフロスや歯間ブラシなどのにおいを確認するのもいい方法です。
口臭を客観的に測定する口臭測定器もあります。硫黄化合物を感知し、数秒でチェックできるもので、歯周病を専門にしている歯科医院や口臭外来のある歯科医院には置いているところが多いので、受診するのもいい方法でしょう。口臭があるかどうか不安な人は、検査をすることで「ない」とわかれば安心できます。
■舌の表面についた白色の苔のようなものがにおいの原因に
さて、朝、起きたときや食事の前、歯みがきを怠っているときなどは嫌気性菌が増殖しやすく、そうした意味では誰にでも口臭は発生します。きちんと口の中を清掃すればにおいは改善します。
しかし、人が顔をしかめたり、測定器で高い値が出たりするような口臭は、その多くが「舌苔(ぜったい)」(生理的口臭)または「歯周病」(病的口臭)によるものです。
舌苔は舌の表面についた白色の苔のようなものです。舌の表面に無数にある小さな突起が硬くなり、その間にさまざまな種類の細菌や古くなった口腔内の粘膜、食べ物のかすなどがたまって起こります。口の中が食べかすなどで汚れていることのほか、唾液の分泌や免疫力の低下などで起こりやすくなるといわれています。
舌苔は舌の清掃を行うことでなくなります。鏡で見ながらきれいに取り除いてみましょう。小児用の歯ブラシや目の粗いタオルなどを使ってもいいですが、専用の舌ブラシを使うとより効果的です。水に浸して舌苔の一番奥に当て、軽い力で手前に引いてください。これをブラシに汚れがつかなくなるまで繰り返しましょう。
さらに殺菌作用のある薬用マウスウォッシュを併用するのも効果的です。寝ている間は唾液が出にくく、菌が増殖しやすいので、就寝前に使うとより効果的とされています。
歯周病の場合、原因となっている歯周病菌(嫌気性菌の一種)が要因なので歯周病自体を治療しないとよくなりません。
治療で症状が改善すると口臭は劇的に減り、測定器の値も大きく改善してきます。そのことがモチベーションになり、治療を頑張ろうという人も少なくありません。歯周病は口臭だけでなく、歯が抜ける一番の原因ですので、積極的に治療を受けましょう。
なお、入れ歯についてもきちんと清掃をしないと、口臭の原因となります。最近は簡便で除菌効果の高い入れ歯洗浄剤が登場していますので、ぜひ取り入れて口臭対策に努めてください。
◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演