仕事で打ち合わせをするときや、大切な人と会うときに気になるのが口臭。自分では大丈夫、と思っていたのに、家族などに「息が臭い」と指摘されたら、ショックは大きいです。口臭の原因は何でしょうか? 自分で確かめる方法はあるのでしょうか? また、歯科で治せるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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口臭についての調査は、少々古いですが厚生省(当時)の保健福祉動向調査(1999年)で実施され、国民の約15%が口臭の有無にかかわらず、「口臭が気になる」と答えています。口腔ケアやオーラルグッズへの関心が高まっている現在、数はさらに増えているのではないでしょうか。
口臭は「口あるいは鼻を通して出てくる気体のうち、社会的容認限度を超える悪臭」と定義されています。しかし、自分ではそのにおいになかなか気づくことができません。
それはにおいを感じる嗅覚(きゅうかく)の特徴が関係しています。鼻の粘膜にはにおいの成分をキャッチし、脳に伝える嗅細胞や嗅神経があります。これが嗅神経から脳の嗅球(きゅうきゅう)という部分に信号として送られ、「においがする」と感知されるわけです。
しかし、同じにおいにさらされ続けるとやがて脳(嗅球)が慣れて、におい自体を感じなくなってしまうのです。これを「順応反応」といいます。
口臭は口の中から発生します。口は奥で鼻腔とつながっており、持続する口臭は常に鼻の粘膜にもさらされています。つまり、順応反応が起こりやすいために、臭いにおいが発生していても、自分ではわかりにくいというわけです。
そして、このことが強い口臭を持つ人を無自覚にしています。一方で、口臭が実際にない人をも不安にさせてしまう原因といえるのです。
では、どうすれば口臭の有無がわかるのでしょうか。口臭の原因の87%は口の中の細菌である嫌気性菌です。この菌が食べかすのうちのたんぱく質やアミノ酸を分解し、揮発性の硫黄化合物を作ることで発生します。