――81歳のいままで、幸い大きな病気はほとんど経験していない。
振り返ってみると50代、60代はまったくもって“青春”ですね。70代に入って「ん?」、80代になって「こりゃあ、やっぱり人間、年を取ると大変だな」って思うようになりました。81歳ともなれば耳も遠くなるし、目も膝も腰も悪い。トータルすると相当に具合も悪いんですけど、でもそういうもんだと思わないと。だって、年を取ることはどうにもならないですからね。
だから、健康法とかはあんまり考えないですね。なるようになる、って性分ですから。週に1回は休肝日を作ってますけど、もともとそんなにお酒は飲めないんです。たばこも29歳でやめました。ほかは気が向いたら歩いたり、家で腹筋をしたり、ダンベルを持ち上げたり。義務化するといやだから、やりたいときに、やりたいようにやってます。
ただ、暗記はやってます。ちょっと時間があればアメリカ合衆国の全州の名前や、覚えた百人一首を声に出して読むんです。円周率も小数点以下千桁までいけますよ。口を動かすし、セリフを覚える鍛錬にもなりますしね。
――さまざまな役を演じて60年。自ら喜劇役者と名乗るとおり、とりわけ「笑い」への思い入れは深い。
ずっと役者を続けるかって? いやあ、それはわかんないですよ。これまでどおり、誰かが呼んでくれたらやるかもしれないし、このままやらなくなっちゃうかもしれない。コントだって80過ぎたら、普通はあんまりやらないでしょう。
今年の2月にも三宅裕司さんと舞台をやったんです。突然、彼から電話があって、「伊東さん、芝居がいいですか? コントがいいですか?」「え? なんの話?」「いや、もう劇場とってありますから」だって。芝居のほうが人がたくさん出るから楽だなと思いつつ、気がついたら「コントやろうよ」って言っていた。
コントは瞬発力や反射神経が必要だし、緩慢に動いてたらお客さんは見てくれないから。
でも、その舞台では、お客さんはよく笑ってくれたなあ。振り返ってみれば、初舞台のときから、やっぱり笑ってもらえることが一番うれしいですね。心底から。
(聞き手/中村千晶)
※週刊朝日 2018年11月16日号