一見すると超男社会と思われがちな狩猟の世界でも、女子の進出が増えている。山を駆け回り、危険とも隣り合わせで、仕留めた獲物を山から引きずりおろしてくる女性たち。趣味としてや野生動物の駆除、動物好きなど動機はさまざまで、高齢化で減少する狩猟者の世界を活気づかせている。
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美容師の児玉千明さんは25歳で大阪から福井県高浜町へUターンした。2015年には最年少の26歳で町議会議員となった。その間、銃免許を25歳で取得した。
「田舎で暇だった。日本海側は冬に天気が悪くて、することがなく、冬の趣味がほしかった」
児玉さんは山に一人で入ることが多く、シカやイノシシを撃つ。獲物は軽トラックまで運び、自らさばいて食べている。
都内に住む30代のOL、有賀千春さんは射撃に興味があった。クレー射撃に取り組もうとしていたが、狩猟関係者の勧めで狩猟をすると決意。なじみがなかったので、冬の猟期には北海道を訪ね、釧路を拠点にエゾシカを撃つ猟師に同行することを5年ほど続けた。昨年、ついに銃免許を取得。現在は千葉県で猟友会メンバーとシカやイノシシ、カモを撃っている。
「猟期の週末は猟に出かけっぱなし。獲物は仲間と分けて持って帰ることが多い。狩猟はずっと続けたい」
猟師が高齢化し減少するなか、最近は女性が増えている。大日本猟友会の会員数は1978年度42万4820人のピークから減少傾向だったが、17年度は10万5786人と前年度に比べ528人増加。女性会員は15年度1183人、16年度1571人、17年度1908人と増加し、全体を底上げしている。
狩猟の世界に若い人が入らず、3分の2が60歳以上で、大日本猟友会は危機感を持っている。「山ガール」ブームにヒントを得て、ここ数年は「狩りガール」のキャンペーンを展開し、女性に浸透しつつある。
趣味として狩猟をする女性もいる一方、野生動物の農作物被害が増え、駆除に立ち上がる女性もいる。
三重県大台町でオートキャンプ場の管理人をする瀬古愛弥さん。7~8年前の20代初め、銃免許を取得した。地元は庭先の植物をシカが食べていくところで、農作物を守るためシカやイノシシなどを駆除する猟師になった。自分で3代目という猟師一家だ。仲間と猟に出て、シカやイノシシは解体し食べている。地元のほか、鳥羽方面の答志島でも活動する。