ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「豊洲市場」を取り上げる。
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すったもんだの末、ついに豊洲市場が開場しました。ちなみに『すったもんだ』を漢字でどう書くのか調べてみたところ、想像通り『擦った揉んだ』でした。『擦る』『揉む』をくり返した果ての豊洲……。そう思うと小池都知事の姿も妙に艶かしく見えてくるから不思議です。
そんな豊洲初日の様子を各局ニュースもこぞって取り上げていました。やれ周辺が大渋滞しているだの、マグロの競り用の照明が築地とは違うだの、端からイチャモン付ける気満々の報道が目立った一方で、オープンし立ての豊洲を一目見ようとスマホ片手にやって来た観光客の話題も。場内には入れないにもかかわらず、初めて好きな人たちはいつの時代も変わらずいるもので、中でもとりわけ30代前半とおぼしき女性へのインタビューがとても印象的でした。魚市場とは到底かけ離れた、かと言って近所を散歩する感じでもない、清楚な丸の内OLみたいな格好をした彼女の脇には、これまた立派な乳母車が……。「どうして豊洲にいらっしゃったんですか?」という質問に、はにかみながら彼女は「私がきょう誕生日で、豊洲市場もきょう誕生日なので……」と。そして乳母車の方に目を向けたところで、画面は次のシーンに切り替わってしまいましたが、さりとて自分の誕生日に乳飲み子を連れて、魚市場の外観だけを見に、あんな綺麗な服を着て……。どこのどなたか存じませんが、ちょっと心配です。旦那さんはちゃんと誕生日を覚えてくれているといいのですが。