今後もこのような、「呼称のややこしさ」があちこちにでてくる。「何の話をしているのか」いちいち確認しなくてはならないからだ。書き手と読み手で異なる概念を想定していたら、誤解のもとになる。注意が必要だ。
■濃くて強いのが蒸留酒、そうでない弱いお酒が醸造酒
話をワインに戻そう。ワインはブドウを原料とした醸造酒だとフランスなどでは定義されている。
では、醸造酒とは何か。
これはアルコール発酵したもので、かつ蒸留酒ではないということ。やれやれ今度は、「蒸留酒とはなんぞや」という話になった。
蒸留酒とは、水とアルコールの沸点の違いを利用してアルコールだけを先に蒸発させ、アルコール濃度を濃くしたものを言う。平たく言えば、「アルコール度数の高い飲み物」だ。
例えば、ブドウを原料とした蒸留酒で有名なものに「ブランデー」がある。最近、ブランデーを嗜(たしな)む人は激減したけれど、ぼくが子どものときはブランデーを楽しむ大人は今よりもずっとたくさんいたように記憶している。
蒸留酒に対して、アルコール濃度を高めないような、単にアルコール発酵しただけのものを「醸造酒」という。濃くて強いお酒が蒸留酒、そうでない弱いお酒が醸造酒といっても、そう外れてはいないだろう。
ワインは醸造酒に属している。ワイン(醸造酒)とブランデー(蒸留酒)は、ブドウを原料にしているという点で仲間だし、どちらもフランスが名産地だ。少しややこしいが、ワインにもアルコール分を強めた「酒精強化ワイン」というのがある。
酒精とは、アルコールのこと。とはいえ、この場合はアルコールの強い(アルコール度数の高い)酒を加えてブレンドして造るお酒であり、蒸発させる蒸留酒とは造り方が異なる。
■厳密な定義がないと歪曲的なやり方も「あり」になる
チェリーワインとか洋梨ワインというものもある。ワインを「ブドウを原料とした」と定義するならば、こういう呼称は矛盾している。