ジャーナリストの田原総一朗氏は、トランプ大統領の主張と米国民の“ホンネ”を指摘し、今後の米国に対する日本のあり方について持論を展開する。
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第4次安倍改造内閣の最重要課題は、トランプ大統領の米国とどのように付き合うかということだ。
ハーバード大の二人の教授が、『民主主義の死に方』という著作を発表し、日本でも翻訳されて話題になっている。ずばりいえば、トランプ氏によって、米国の民主主義は死に至るというのである。
たしかに、トランプ氏は自分と意見が違う存在をすべて敵視し、露骨な憎悪語で罵倒している。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNなどのマスメディアはいずれも敵で、政権を倒すためのフェイクニュースばかりを出し続けている、と決めつけている。その根拠などは示さない。示すつもりもない。ただ罵倒し続けているのである。
ハーバード大の教授たちだけではない。私が取材したかぎりでは、ワシントンにいる共和党幹部も、学者やジャーナリストたちも、ほとんどが“トランプ氏は米国の民主主義を殺す。だから何とかして失脚させなくてはならない”と考えている。そのために、ロシアゲート疑惑が確定するのを待ち望んでいるのである。
だが、米国のいわば大衆の捉え方は大きく異なっている。
ワシントンの事情通たちの話を聞くと、実は10日ばかり前まではトランプ氏の共和党は中間選挙で敗れる、という捉え方が強かったのだが、ここにきてトランプ氏が盛り返し、大接戦になっているというのである。
なぜ、盛り返したのか。一つは、カバノー氏の性的暴行が否定され、最高裁判事に就任したこと。そしてニューヨーク・タイムズが、トランプ氏が父親から資産を受け継いだときに多額の脱税をしていたという事実を報じたこと。さらにワシントン・ポストの記者がトランプ政権の内幕を暴く著作を刊行したことが理由だというのである。
トランプ氏の脱税はずいぶん前に時効になっていて、それをニューヨーク・タイムズがわざわざ報じたのは、トランプ氏を失脚させるための敵意に満ちたものであり、ワシントン・ポストの記者の内幕本も同意図だということで、大衆のトランプ支持がむしろ高まったというのだ。