
女優の吉岡里帆さんが芝居をやりたいと思ったのは、高校3年生のときに、地元京都で、同志社大学の劇団が上演していた「銀ちゃんが逝く」(つかこうへい作)を観たことがきっかけだった。それまで、一人書道に取り組んでいた吉岡さんは、舞台の内容はもとより、“たくさんの人が心を一つにして作品を作り上げる”ことに感動した。
「しかも、学生演劇って、お金のためにやっているわけじゃない。見返りを求めずに、ただピュアに“表現すること”を模索している人たちが、一つの舞台に自分たちの知恵とかエネルギーを全部注いでいた。そこに、すごく心が動かされて、すぐ“仲間にしてください!”と直談判しました。門前払いされましたけど(笑)」
見かけによらずというべきか。吉岡さんはとにかくアツい。今どき珍しいぐらいのハングリー精神の持ち主だ。ドラマ主演のオファーが引きも切らない売れっ子だというのに、日々「自分は何でこんなにできないんだ」と打ちひしがれ、寝る間を惜しんで、自分の中の課題に励む。
「新しいものでも、人の心に届くものでも、エンターテインメントって、常に更新され続けているじゃないですか。だから、私がこの仕事をしている限り、ゴールってなくて……。私が前進すると、目標や夢も前進するわけで、追いつける日は絶対来ない。そもそも、満足したら終わりだと私は思っているんです。つらいときやしんどいときはどうするか、ですか? もっと頑張っている人のことを思って自分を奮い立たせます」