作家・室井佑月氏は、安倍晋三首相の貿易交渉における姿勢が一貫していないようにみえると指摘する。
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自民党は、2012年の衆議院選挙のとき、
「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」
とマニフェストに書いていた。選挙のポスターにも書いていた。
けど、安倍首相は16年4月の衆議院TPP特別委員会で、そのことについて訊ねられると、
「私自身はTPP断固反対と言ったことは一回も、ただの一回もございませんから、まるで私が言ったかのごとくの発言は慎んでいただきたい」
なんて激昂した。
安倍さんの口からはその言葉は出なかったってことか? 選挙が終われば、農業従事者に遠慮することないもんね。
あの方は、前米大統領のオバマさんにTPPに参加しろとせっつかれていたから、波風を立てないためにも、この国の農家を切り捨てることにしたんだよ。
その当時、いわれていたことは、
「米国とこの国、二国間で協定を結ぶよりは、TPPのほうがいい」
「韓国が米国と二国間協定を結び、どんな目にあったか」
「日本の農家も競争をしたほうがいい。そして、この国の農作物は、美味しいから高級品として海外と勝負できる」
たしかにこの国のフルーツなどは、海外で食べるものより断然、美味しい。けど、普段、口にするものと、たまに食べる高級品では、その量が違うじゃんね。
それから、オバマ大統領からトランプ大統領に代わり、トランプさんは米国はTPPに参加しないといいだした。
すると安倍さんは、
「TPPの重要性をトランプ氏に訴える」
と勇ましいことをいいだした。たしかそれは17年の初頭。でもって、18年4月、マール・ア・ラーゴのトランプさんの別荘を訪れたときも、共同記者会見の場で、まだそんなことをいっていた。
そしてつい先日、9月26日、安倍さんはトランプさんと、農産物などの関税引き下げに向け「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉開始で合意したって。
TAG……はじめて聞く言葉だよ。たしかに、FTA(自由貿易協定)とTAGでは文字が違う。
でもさ結局、TAGって日本があれほど怖がっていた米国との二国間交渉なんじゃないの?
安倍さんは、
「TAGは、これまで日本が結んできた包括的なFTAとはまったく異なる」
という。テレビに出てきた専門家は、「交渉対象が物品のみで、サービスや投資分野が含まれないからFTAとは違う」といっている。
しかし、首脳会談後の共同声明には、サービスや投資分野の交渉も書き込まれていた。……ん? じゃ、呼び方だけの問題か?
自動車を守れたというけど、それは正式に約束されたの? どの分野がTAGの対象にされるの? なんで国民にきちんと話せないことばっかなの? つーか、安倍さんの交渉って、米国の御用聞き?
※週刊朝日 2018年10月19日号