真心ブラザーズの16作目となる新譜『INNER VOICE』が実に痛快。全編ほぼ一発録りによるモノラル録音で、ガッツあふれる骨太なギター・ロックの醍醐味満載。愉快で味わい深い11曲が詰まっている。
大学時代、同じ音楽サークルの先輩と後輩だったYO―KINGこと倉持陽一と桜井秀俊がフォーク・コンテスト出場のために真心ブラザーズを結成し、10週連続勝ち抜いてデビューしたのは1989年。翌年に出した4作目シングル「どか~ん」が報道番組のプロ野球コーナーに起用されて話題となり、後には高校野球の応援歌として演奏され、CMにも使われた。
当初はフォーク・デュオ風だったが、グランジ、ソウル/ヒップ・ホップと音楽性を変化させ、「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」など多彩な曲をヒットさせてきた。
2014年の『Do Sing』以降は、伊藤大地(ドラムス)、岡部晴彦(ベース)を加えた4ピースのバンドLow Down Roulettesでレコーディングやライヴに取り組んできた。
昨秋発表の前作『FLOW ON THE CLOUD』では、ボブ・ディランの『ジョン・ウェズリー・ハーディング』を参考に、シンプルな演奏を追究。このアルバムも基本的に一発録りでモノラルだった。収録曲の「雲の形が変化をした」の歌詞には、ライ・クーダー、ニール・ヤング、リトル・フィート、マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンス、アレサ・フランクリンらの名前を続々と登場させ、YO―KINGが親しんできたロックやルーツ・ミュージックを披露していた。
新作『INNER VOICE』も、その流れをくみ、基本的には4人の演奏によるる一発録りでモノラル録音。前作では一応デモ・テープを用意したそうだが、今回はメンバーに歌詞とコード譜を手渡しただけ。リハなしのままYO―KINGの弾き語りに合わせて演奏し、エンディングなども成り行きまかせ。いきなり演奏したものがそのままOKテイクになることもあったとか。