作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は韓国と日本のジェンダーへの意識の差について。
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韓国から日本に留学している大学生と話す機会があった。来日して数年経つが、未だに「女子力」という言葉に慣れないという。例えばラーメン屋に一人で入れば、隣に座った赤の他人の男に「女子力ないね~」とからかわれたり、同級生との飲み会でサラダ等を取り分けないと「女子力ないね~」と男子から笑われたり。抗議するのもばかばかしいが、ムッとしてみせれば「女子力がない」ことに傷ついていると思われかねず、ただただ死んだ目でやり過ごすしかない。
「日本人が、自分から女子力ないと言って自虐するのが意味がわからないです」と本当に嫌な顔をした。
#MeToo運動が大きく盛り上がる韓国では、フェミニズムの概念が社会に定着しつつある。だからだろうか。最近、K−POP界からもフェミを感じることが続いた。例えば、「神話」という男性グループがいる。K−POP界を牽引してきた彼らの一人が、最近こんな発言をした。
「過度に女性が商品化されるアイドル産業に、先輩として胸が痛い。このような市場を持つ国がフェミニズムを語れるのか」
今年2度もビルボード1位になり、今、世界で最も注目されているBTS(防弾少年団)は9月、国連本部で行われた若者向けのプロジェクトで「自分の言葉で話そう。肌の色、ジェンダー関係なく、自分について語ろう」とスピーチした。フェミとかジェンダーとか、日本のアイドルから聞いたこと、あるだろうか。むしろ、恋愛したことで坊主になって謝罪したり、妻のいる男と恋愛したことで激しく叩かれる芸能界で、最もタブーなのが、女が自分の言葉で語るフェミニズムではないか。