成年後見制度に詳しい遠藤英嗣弁護士は、課題をこう指摘する。
「弁護士、司法書士、社会福祉士が制度を担っているという意識が強く、排他的な構造で権益を守ろうとするスタンスだった。政府は市民後見人を育てられず、監督する裁判所は仕事が多すぎ、この制度は片手間にならざるを得なかった」
最高裁によると、17年末時点の利用者は約21万人。一方で、認知症患者は約500万人と推計される。政府も「利用者数が認知症高齢者の数と比較して著しく少ない」と認めている。
そして、認知症マネーの三つめのリスクが、「だまされる」。
ある80代の認知症女性は、頻繁に訪問販売を受け、高額な布団などを買わされ続けた。販売員は一人暮らしの女性に、「元気ですか?」と優しい言葉をかけて訪れる。女性の子が帰省した際、家に物があふれていることで発覚したが、買い物額は数千万円に上り、預金がほぼゼロだった。
全国介護者支援協議会の上原隆夫研究員は「不要な商品を購入するのは一人暮らしの人が多い」と指摘する。最近は買い物だけでなく、家族のブランド品などを売ってしまう人もいるという。こうした出来事を機に疎遠になり、家族関係が壊れた例もある。
認知症の人は健康面だけでなく、経済的な面でも様々なケアが必要とわかる。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2018年10月5日号
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