「1日2回、頭皮に塗るのはどちらも同じです。ミノキシジルの場合は3カ月目ぐらいで効果が出始めることが多いですが、塩化カルプロニウムのほうがゆっくり効いていく印象があります」(植木医師)

 薄毛治療では近年、日本発の「赤色ナローバンドLED」やアメリカで人気の「低出力レーザー」などの光治療が有効な治療の選択肢になってきている。赤色ナローバンドLEDは特殊な赤色光で、頭皮に照射して毛を増殖させる物質の分泌を促す。

 一方、低出力レーザー(LLLT)治療はアメリカをはじめとした海外で科学的根拠が証明され、LLLT特有の赤色の可視光線を頭皮に照射することで発毛促進効果が認められている。ガイドラインでは、LED照射とともに推奨度B(おこなうよう勧める)となっている。治療法の少ない女性の薄毛治療では、「光治療を併用することでより効果を上げられることが期待されています」と植木医師は話す。

 このほか、女性の薄毛の場合はウィッグ(かつら)もQOL(生活の質)を上げるのに有効だ。ガイドラインでも、C1(おこなってもよい)とされている。

 近年ではウィッグの素材も進化を遂げ、大きく分けて「人工毛」「ミックスヘア(人毛と人工毛のミックス)」「人毛」の3種類の素材が使われている。カラーやスタイルも豊富になり、より地毛に自然になじむものが増え、「脱毛症を隠す」という意識ではなく、おしゃれを楽しむ感覚で使えるようになってきている。

「ウィッグを着けることで薄毛の方でも人目が気にならなくなって気持ちが楽になる方も多いです。ウィッグで抜け毛が進行することもないのでぜひ活用してほしいですね」(同)

 女性の薄毛治療において、植木医師のお勧めは、外用薬と併せておこなう生活改善だ。女性は男性に比べ生活指導にまじめに取り組む傾向があり、効果も上がりやすいと植木医師は言う。

 たとえば、ゆっくりと入浴をして血行を改善し、たっぷり眠って日頃の睡眠不足を解消する。

「女性にとくに不足しがちなタンパク質、鉄、亜鉛を含む栄養バランスのよい食事をしっかりとることも大事です。場合によってはサプリメントで補給してもいいですが、できるだけ食事から摂取するのが理想的です」(同)

 この他、カフェインのとりすぎを避け、日頃のヘアケアを見直すことも時には必要になるという。

 洗髪後はしっかりタオルドライをした後、ドライヤーで髪の根元の地肌をしっかり乾かす。地肌を濡れたままにしておくと、頭皮が蒸れて菌が繁殖しやすくなったり、皮脂が余分に出てしまったり、切れ毛が増えたりなど、頭皮トラブルのもとになる。その結果、薄毛にもなりやすくなってしまう。カラーリングとパーマも同時にせず、カラーリングの間隔も2カ月は置いたほうが髪や頭皮のダメージは少ないという。

 ポニーテールなど、髪を日々同じ結び方で強く引っ張り続けることも、その部分の頭皮の血管が細くなって血流が悪くなり、薄毛になりやすくなる。髪を結ぶ位置や結び方をなるべく変えることでこうしたトラブルは未然に防げる。

 そして何より髪のことで必要以上に悩みすぎないことが大事だと植木医師は説く。

「髪について悩みすぎてしまう場合は、思い当たる原因が他にないかを考えたり、悩みを聞いてもらえる人を探したりすることも大事です。不安が強い場合は皮膚科医にまずは悩みを伝えて対処法を一緒に考えましょう。また、不眠や家庭内のことなど、薄毛のこと以外で悩んでいる方には心療内科や精神科を紹介することもあります。悩みの解決とともに薄毛も改善することがあります」

 女性の薄毛治療はこうした心身のケアも大切な薬となるようだ。(ライター・石川美香子)

週刊朝日  2018年10月5日号