歯周病の原因となるのは口の中にいる歯周病菌。つまり、歯周病は風邪やインフルエンザと同じ、感染症です。だとすれば、どのようにしてうつるのでしょうか? キスや口移しはやめたほうがいいのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯周病の原因である歯周病菌は常在菌の一種です。常在菌とは私たちのからだにすみついている細菌のこと。人間は無菌状態で生まれてきた後、母親や周囲の環境からさまざまな細菌をもらい、これが体内で増えていきます。
さまざまな研究から歯周病菌はむし歯菌とともに、他人の唾液(だえき)を介して感染することがわかっており、主に母親や家族から、うつることがわかっています。具体的な感染ルートは口移しの食事やスプーンなどの共用、キスなどです。子どもの時期では生後19カ月前後が最も感染しやすく、この時期のことを歯科関係者の間では、「感染の窓」といいます。
19カ月というと1歳7か月。ちょうど乳歯が生えそろう時期であり、このことも感染のしやすさと関係していそうです。「離乳食の口移しを控えましょう」「コップは別々にしましょう」などといわれるのはこのためです。
ただし、興味深いのはむし歯菌の感染時期がほぼ子どもの時期に限定されるのに対して、歯周病菌は成人になってからも感染するという点です。さまざまな研究から歯周病の25~75%は夫婦間の感染であるという結果が得られており、アメリカでは「歯周病はキスで感染する」と広く理解されているようです。
このような話を聞くと、「パートナーとのキスをやめよう」という人が出てくることでしょう。しかし、そこまで神経質にならないほうがいいと私は思います。
なぜなら人間のからだはいたるところに細菌(常在菌)がすみついています。口の中にも細菌は多く、その数は300~700種類。腸内細菌と同じように善玉菌と悪玉菌があり、両者がバランスをとりあって生態系を作り出し、生存しています。