漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「FNS27時間テレビ」(フジテレビ系 9月8日18:30~)をウォッチした。
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テニス・全米オープンで大坂なおみ選手が優勝した頃、松岡修造はフジテレビで黄金色の衣装をまとい、「しょうゆ、しょうゆ、しょうゆはスゴイ~♪」と踊っていた。
もちろん修造は、全米オープンの解説もしていたわけで。なんでこんな同時多発修造案件が発生したかといえば、「FNS27時間テレビ」がほとんど録画放送だったからだ。
もうさ、録画で「27時間テレビ」って、やる意味がわからない。ひたすら録画流して、時々生放送。それ、いつもだろ。通常営業だろ。
そんな無意味な27時間の中、唯一目が釘づけになったのは、「くいしん坊!万才 Presents 『毎時間修造』」コーナーだ。1時間に1回修造が出現し、食に関する名言を熱く語る。
それはあたかも、大坂なおみ選手に捧げるエールのごとき言葉の数々だった。例えば「チャンスは回転寿司だ!」と修造は言う。
「どうせもう一回まわってくるからいいやって、甘ったれんじゃねぇよ。……チャンスってのはな、一度しかないんだ。本気待ちで、チャンスを掴め!」。掴んだから、なおみ!
「丁寧に心を込めて(卵を)割ったら、黄身は輝く。さあ、自分の殻を破れ! 黄身らしく輝け!」。輝いたよ、なおみ!
「納豆見てみろよ。納豆ってのは、絶対あきらめないんだ」とか、「コロッケってのはな、何度ころんでもコロッとケロッとすぐ立ち上がってくるんだよ!」とか。
もはや食べ物も、意志持ち始めてる。修造のプロテニスプレーヤー歴12年、「くいしん坊!万才」のレポーター歴18年って、もうくいしん坊人生の方が長いんだからしょうがない。
最も戦慄した言葉は、「どんな食べ物も修造だ!」。これが、とんでもない。
「僕は、なんとなく食べたことなんてないぞ。なぜなら松岡修造すべてが、食べ物なんだよ。だからこそ、どんな食べ物も修造なんだ」
何が「だからこそ」なのか、まったくわからない。もう修造自体がシュールレアリスム。現代アートなんじゃないか、松岡修造。
最後に「ありがとうございま舌!」と、めいっぱいベロを出した修造の顔は、一言でいうと「狂気」。まっすぐな狂気。もしも「27時間全部修造テレビ」が放送されたら、私の精神がガラガラと崩壊していく準備はできている。
※週刊朝日 2018年9月28日号