投資家の村上世彰さんのご登場です。「村上ファンド」で世間を揺るがした“物言う株主”は、以前と比べてずいぶん穏やかなご表情。しかし眼光の奥にはやはり、熱い思いを秘めておられました。作家の林真理子さんが迫ります。
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林:ご無沙汰してます。村上さん、容貌がずいぶん変わりましたね。村上さんだと気づく人いないでしょう。
村上:ええ、いないですね。
林:ニッポン放送の株の買い占めで初めて村上さんの名前が世の中に出たときは、「すごい人が、すごいお金で、すごいことをし始めた」という印象でしたが、今はこんな穏やかな感じになられて。
村上:でも僕、昔からこんな感じですよ。
林:髪の毛が真っ黒で、もっと眼光鋭かったです。
村上:(眼鏡をはずしながら)眼鏡を取るとけっこう眼光鋭いんです。目がギョロギョロしてるんで。
林:彫りが深いし目がギョロギョロしてるから、誰かが「あの人はおじいさんがインド人なんだよ」と言ってて、そうなんだと思ってました(笑)。
村上:アハハハ。それ昔「ウィキペディア」にそう書かれていたんですが、違います(笑)。
林:村上さんは通産省(現・経済産業省)のご出身で。昔、通産省の友人に「小説を書いてる若い人がいる」と聞いて、私も読ませていただきました。
村上:「滅びゆく日本」ですね。
林:とても難しい小説でした。去年『生涯投資家』という本を出されて話題になりましたが、今度は子どものためにわかりやすくお金について書かれた『いま君に伝えたいお金の話』という本を出されたんですね。拝読しましたが、私、最後のほう難しくて……。
村上:アハハハ。わからなかった?
林:はい。村上さんがよく対談されている池上彰さんは、経済のことも、何でもよくご存じですが、私は池上さんみたいに難しいことはわかりませんので、今日は中学1年生の女の子のレベルでお聞きします(笑)。
村上:はい、よろしくお願いします。
林:ご本を読むと、日本ってお金をため込む国民で、全体で1800兆円もため込んでるんですよね。日本という国を解散して、ため込んだお金をみんなで分けると、赤ん坊まで含めて1人1千万円もらえるんでしょう?