メニエール病は、内耳の障害といわれている。内耳の器官を満たしている内リンパ液がたまって内リンパ水すい腫しゅという水ぶくれのような状態になり、神経を刺激してめまいを起こすと考えられている。しかし、メニエール病のメカニズムは解明されていない。

「以前は、水分を多く摂ると内リンパ液がさらにたまると考えられ、水分を多く摂らないような指導がされていました。しかしこの方法で病状がなかなか改善しないことに疑問をもち、研究をしました。その結果、脱水状態やストレス状態が続くと、利尿作用をもつホルモン系の機能が高まってしまい、内耳の血流を低下させ、それが発症を誘引する可能性があるとわかってきたのです」(長沼医師)

 そこで北里大学医学部生理学の河原克雅教授と長沼医師が共同で考案し、00年から実施している治療法が、水分摂取療法だ。カフェインや塩分のない水や麦茶などを、男性は1日2~2.5リットル、女性は1.5~2リットル摂取する。単純な治療法だが、長沼医師の患者のうち約93%はほぼ完全にめまいが抑えられているという。

 太田さんは、あまり水分を摂る習慣がなかったうえ、激務と母親の介護に悩み、ストレスを抱えていた。

 長沼医師は、ストレスそのものもメニエール病の発症原因になると指摘する。

「十分に水分を摂取し内耳の血液循環がよくなることで、めまいや聴力低下などの症状が改善すると考えています。ただし、心臓と腎臓の機能が正常でないと水分を多く摂れないので、まず検査をしたうえで治療を開始します。問題がある場合、専門医と相談して水分量を決めています」(同)

 太田さんは10月に水分摂取療法を開始した。11月になると、めまいがたまに起きたものの、耳の聞こえは改善しはじめた。

「水分摂取とあわせて実践してほしいのが、水泳や水中歩行です。週に2~3回をおすすめしています。水圧で心臓に血液が戻ることで、内耳の血流が保たれると考えています」(同)

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めまいの治療法はさまざま