聖マリアンナ医科大は、「得点操作はしておらず公正、公平な試験の結果だ」と主張している。
全ての大学は不正を否定しているので、このままだと女子差別問題は十分な調査がなされないまま、うやむやになってしまう。大手教育事業会社の幹部もこう批判する。
「文科省の調査結果を見ても、大学が本当に正しい情報を出しているのか疑わしい。長年受験生を見てきたが、男子より女子の方がまじめで成績もいい傾向がある。男子の方が女子より合格率が高いのは、小論文や面接など客観的でない試験で得点調整をしている可能性がある。文科省はこの機会にきちんと調べるべきだ」
文科省が積極的に調べにくい背景には、医学界の一部に女性差別が根強いこともある。女性合格者が増えると、女性が敬遠しがちだとされる外科などで医師が足りなくなり、医療に悪影響が出るとの考え方だ。
「女性は外科などハードな職場を選ばない。医療現場を維持するためには、女性の比率をある程度抑える必要がある。東京医科大がやったことも理解できる」(男性医師)
女性医師の中でも、こうした考えに賛同する人も少なくない。
だがこうした医学界の一部の“常識”は、多くの国民にとっては“非常識”だろう。東京医科大は得点操作の事実を隠しており、女子受験生は不利な扱いを受けたことが分からないまま“だまされた”かっこうだ。
東京医科大の問題を受けてできた「医学部入試における女性差別対策弁護団」には、元受験生らの相談や問い合わせが160件以上来ているという。今後、東京医科大に受験料の返還などを求めていくという。
文部科学省は、10月をめどに最終的な調査結果を公表するという。女子差別問題を調べるつもりがあるのか、文科省の対応が問われている。
(本誌・吉崎洋夫)
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