入試で女子差別をしていた東京医科大(c)朝日新聞社
入試で女子差別をしていた東京医科大(c)朝日新聞社
調査委について対応が問われる文部科学省(撮影/多田敏男)
調査委について対応が問われる文部科学省(撮影/多田敏男)

 東京医科大の不正入試で明るみに出た女子差別問題。文部科学省はほかでも行われていないか、医学部医学科がある全国81大学に調査を指示し、結果を9月4日に発表した。

【合格率で男女の格差が大きい大学はどこ? ランキングはこちら】

 男女別の過去6年間の平均合格率(合格者数/受験者数)は、男子の方が女子より1.18倍合格率が高かった。2018年度の結果を見ると、不正のあった東京医科大では男子の方が女子より3.11倍高。次いで、日本大が2.02倍、順天堂大が1.93倍、新潟大が1.79倍となった。

 教育関係者によると、医学部を目指す男女の学力差は大きくないという。合格率に2倍近い差があるのは不自然だとの見方もある。しかし文科省によると、得点操作などを認めた大学はなかった。

 文科省は「結果を踏まえて追加調査も検討していく」とするが、調査に積極的だとは言いがたい。教育関係者は「本気で問題に切り込む気があるのか」と疑問の声も上がる。

 そもそも文科省の調査は、十分とは言えないものだ。各大学に調査票を送って回収したというが、大学の自主的な回答に任せており、仮に大学側が虚偽の回答をしても見抜けるかどうかはわからない。

 調査に積極的とは言いがたい姿勢は、今回公表されたデータを見ても透けて見える。調査では一般や推薦、AOなどそれぞれの入試方式における受験者数や合格者数を尋ねているが、公表した合格率は、入試方式をまとめて扱っているためだ。本来は入試方式ごとに、1次試験と2次試験を含め、男女の合格率や得点分布の違いを細かく分析しないと実態は見えてこない。

 例えば、文科省の調査では聖マリアンナ医科大は男子の合格率が女子よりも1.47倍高くなっている。これだけでも男女の開きはあるが、実は一般入試ではさらに差が広がる。大学側がホームページで公開している推薦入試の合格者数をもとに編集部が一般入試の合格率を推計すると、男子は7.4%、女子は3.6%で、男女の格差は約2倍になるのだ。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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