フジテレビ月9ドラマとして10月から放送が予定されている「SUITS/スーツ」。同名の海外人気ドラマの日本版で、主演は織田裕二。織田が演じる敏腕弁護士とHey!Say!JUMPの中島裕翔演じる天才若手との、いわゆる“バディ物”だ。
それに鈴木保奈美が出演することが発表された。1991年の大ヒットドラマ「東京ラブストーリー」のカンチとリカが、27年ぶりに再び共演することでも話題を集めている。
月9はフジの看板だったが、最近では視聴率が伸び悩んでいる。「東ラブ」コンビが、崖っぷちの月9を救い、ブームを再び巻き起こしてくれるのだろうか。
「正直なところ、現時点では1ミリも期待できません(笑)」
ドラマ評論家の吉田潮さんは、いきなり手厳しい。
「なぜ今『東京ラブストーリー』!?と感じます。当時の大ヒットの呪縛にとらわれ2人の名前を出すことがフックになるという考えが、相変わらずズレていますね」(吉田さん)
上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)も、フジの姿勢に疑問を抱く。
「鈴木さんで話題のタネをまこうという発想が、非常に心配です。男性2人のバディ物としてひきつけることができないのかと思いますね」
海外のヒットドラマのリメイクという手法にも、碓井教授は物足りなさを感じるという。
「『SUITS』のように映像作品としての原作があると、その舞台やキャストを日本に置き換えるだけのアレンジになってしまいます。視聴者側も、『ああ、アレをやるのね』という受け止め方になる。申し訳ないのですが、フジのドラマ制作力低下が露呈したと言われても仕方ありません」
吉田さんも同様の意見だ。
「『逃げ恥』や『あなそれ』、現在放送中の『ギボムス』で、新たな家族の在り方を描いているTBSは、見せ方が近年とてもうまい。海外ドラマをそのまま置き換える『SUITS』には、そういった新しさが感じられないんです」
碓井教授は期待を込めて、フジにげきをとばす。
「オリジナルドラマの衰退は、ドラマ界全体の衰退にもつながります。漫画や小説を含め“原作モノ”が主流の今だからこそ、おもしろいオリジナルドラマを打ち出してほしい。『これがフジテレビのドラマだ!』というのを見せてくれたらなぁ、と思います」
「楽しくなければテレビじゃない」。このフレーズを、フジのドラマから再び感じたい。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日2018年9月7日号