ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。グーグルの中国再進出計画が批判される理由を解説する。
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グーグルが中国政府の検閲要求に応じた検索エンジンを開発し、中国市場への再進出を計画している──。米調査報道メディア「インターセプト」が1日に報じたスクープは、世界中を駆け巡った。
かつてグーグルは2006年から中国で検閲に対応した検索サービスを展開。
「百度」に次ぐサービスとして3割程度のシェアを獲得していた。しかし、年々中国政府からの検閲強化の圧力が高まり、さらにはグーグル自身がサイバー攻撃を受けたことで10年3月、中国市場から撤退していた。
当時、グーグルの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏は幼少期をソ連で過ごした経験から、似たような全体主義国家である中国にこれ以上の協力はできなかったと、撤退の理由を語っている。
報道によると中国への再進出は、社内でも幹部以外にはごく一部の従業員しか知らない極秘プロジェクトとして進められていたようだ。検索結果から特定のトピックや外国のメディアなどを除外するアンドロイド向け検索アプリが開発されており、すでに中国当局にデモ版が提出されているという。
中国がネット上で厳しい言論統制を行っていることは周知の事実だ。共産党批判や民主化運動、天安門事件などのトピックから、デモを意味する「散歩」や習近平国家主席を揶揄する「くまのプーさん」といった隠語に至るまで、政府に不都合なあらゆる情報を検閲して取り締まっている。「グレート・ファイアウォール」とも呼ばれる情報フィルタリングシステム「金盾」により、国外の報道やソーシャルメディア、人権NGOなどへのアクセスを遮断しているのだ。
現在の中国に再進出するとなれば、当時よりさらに厳しい検閲への協力が求められることは疑いがない。そのため、この報道以降、グーグルに対する強い批判が相次いでいる。