そもそも、「短期金利は中央銀行、長期金利は市場が決める」。これが私の学んだ金融論であり、30年間の市場での経験もそうだった。長期金利を思いのまま動かせるなど、日銀の思い上がりもはなはだしい。

 日銀自身も2016年11月まで、ホームページの「教えて! にちぎん」という一般国民向けのコーナーに、「中央銀行は長期金利を思いのままに動かせない」と書いていた。しかし、突然「長期金利はコントロールできる」と書き換えてしまった。

 少なくとも、日銀事務方は、かなり無理筋の政策だと気づいていただろう。「異次元緩和」と称して長期国債を爆買いして長期金利を低く抑えこもうとしてきた。今までは政府の支払金利額を抑え、資金繰り倒産回避に役立ってきた。

 一方で、異次元緩和の出口は難しく、必ずやハイパーインフレを起こすとの歴史の教えを日銀は無視してきた。その思い上がりが今後試されるが、日銀がそこに気づけば、畳の上で死ねなくなるのは我々国民なのだ。冗談じゃない。

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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