御厨:大臣でも何でも実務を担わないと政治家は成長しない。伸ばすなら、今の段階で官房に入れるとかするべきだが、それはやらない。

松原:進次郎さん以外の有力な若手はいないのでしょうか。

御厨:河野太郎外相をどう見るか。大臣になって言うことがずいぶん変わってしまったのが心配。小渕優子議員は政治資金の不祥事から復活できず、死に体。小渕恵三元首相が残した後援会などの集票システムが足を引っ張っているように見えます。

松原:稲田朋美議員も失態に対するリカバリーが下手すぎて、もう首相候補とは言われないですね。本当に焼け野原。

御厨:安倍さんは新人を使わない。スキャンダルになることを恐れているんです。

松原:子飼いを育てたり、身辺をチェックしたりすればいいと思うのですが、やる気はないのでしょうか。

御厨:ないですね。それが最大の欠陥。首相や総裁の最大の仕事は、次の人を育てること。何人も育てておかないと最終的に党がもたないと昔は考えたが、そういう考えがない。

松原:安倍さんは小泉純一郎元首相に後継者の一人として育てられましたよね。

御厨:小泉さんに育てられたことを本当に良かったと思っているかは微妙です。最初はかなわないと思っていたが、2度目の首相を務め、小泉さんの在任日数を超え、だんだん自分のほうが偉いと思っているかもしれない。自分が育てられたというよりは、自分で育ってきたと思いたいのでは。

 また、党の劣化もすごい。次の人事で二階俊博幹事長は代わらないと思うが、晩年の金丸信氏のように昼の2時、3時はうつらうつらしているらしい。高村正彦副総裁も議員じゃないから暇を持て余しているのではないか。副総裁室に日参していると聞きました。

松原:このまま安倍さんが3選をすると、憲法改正くらいしか政治課題が見当たりません。

御厨:でも、安倍さんは本音では憲法改正はやりたくはないと思う。日本の国民が保守的で改正を踏みとどまることはわかっているから。JR東海の葛西敬之名誉会長がかつて、日本は危機的状況でないと賛成しないと言っていた。その考えを安倍さんも共有しているはず。

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