9月の自民党総裁選への出馬に意欲を示していた候補者たちが苦境に立たされている。野田聖子総務相は金融庁への圧力問題で揺れる。すでに不出馬を表明した岸田文雄政調会長には、身内の岸田派からも厳しい声が相次ぐ。
「派閥の若手は主戦論でまとまりつつあったのに、安倍(晋三)陣営に脅されて降りるなんてヘタレすぎる……」(岸田派若手議員)
石破茂元幹事長はそんな岸田氏をこうかばった。
「岸田さんが出馬を見送られたことはものすごい苦悩があったと思う。かつて、中川一郎先生が総裁選にお出になった後、自ら命を絶たれたことがあった。新聞報道でしか私は存じませんが『今さら何だ』『岸田派なんて人事で徹底的に干せ』と。何ですかこの自民党は」(7月26日発言)
3選を目指す安倍陣営のターゲットは、石破氏に絞られた。
「安倍さんは無投票にしたいという思いがあるようです。石破氏の周辺にいて立ち位置が明確でない議員に、アメとムチでプレッシャーをかけています。アメは党内でのポストや次期選挙での優遇など議員によって使い分けている。一部、切り崩されている議員もいて『急に、電話に出なくなった』と石破陣営が嘆いている。だが、圧倒的に優勢とされる安倍陣営のこういう手法に、反発も少なくない。党内では『安倍さんを前回の総裁選で無投票で信任したら、手法が強引になった。今回は選挙をしたほうがいい』という意見も多い。安倍さん、石破さんのほかに候補が出てくるのではないか」(自民党幹部)
取り沙汰される第3の候補だが、野田総務相は推薦人集めで苦戦し、ほぼ「消えた」という。
「金融庁への圧力に加え、後ろ盾になってもらった小池百合子さんが失速したのが痛い。総裁選に出るには20人の推薦人がいるが、野田氏は前回、18人まで集めた。うち8、9人は小池さんが声をかけた人だった。残りが宏池会(岸田派)前会長の古賀誠さんで、野田さんが自力で集めたのは数人。今回も野田さんを応援したいというのは、同じ岐阜選出の議員ぐらい。岸田さんが出なくなったことで古賀さんは動きやすくなったが、野田さんのために動くのは九州の議員数人だろう。野田さんは消えたよ」(細田派の中堅議員)