安倍首相が、自分や妻が森友学園の認可や国有地売却問題などに関わっていたら、首相も国会議員も辞める、と言った。そこで、財務省は慌てて決裁文書を改ざんしたのである。それを最高責任者である麻生財務相は“なぜ改ざんしたのか、わからないから答えようがない”と記者たちに述べ、さらに“個人的にやったことで、よくある話だ。財務省には責任はない”とまで言ってのけた。

 国会の証人喚問で偽証したということで、野党が佐川宣寿氏を告発しようとしているが、私はむしろ佐川氏に同情している。彼が虚偽の証言をせざるを得なかったのは、いってみれば麻生財務相や安倍首相を守るためで、その佐川氏が職を失って、麻生財務相や安倍首相が何の責任も取らないとはどういうことなのか。

 また、24日に経済産業審議官の柳瀬唯夫氏が退任すると報じられた。各紙は、柳瀬氏を証人喚問できなくするための政府の措置だと報じているが、私は柳瀬氏にも同情している。彼については課長時代からよく知っているが、上司の許可なく勝手に事を進めるような人物ではない。2015年2月に安倍首相が加計孝太郎理事長と面会したとなると、柳瀬氏の行動がきわめて合理的になる。安倍首相を守るために、自らの人格までも犠牲にしているのであろう。

 その柳瀬氏が、定年でもないのに、経産省を辞めなければならないとはどういうことなのか。

 しかも、その安倍内閣の支持率が、朝日新聞で38%、共同通信では43.4%もあるのはなぜなのか。理解に苦しむ。

※週刊朝日  2018年8月10日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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