連載「歯科医が全部答えます!聞くに聞けない『歯医者のギモン』」では、患者が歯科医に対して感じている疑問や不満について、テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に回答してもらいます。第1回は「歯を大切にする人はエリートが多いって本当?」。高学歴、高収入の人たちは「歯もきれい」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
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「歯を大切にする人はエリートが多い」のは、事実だと思います。私のクリニックには弁護士や開業医、IT関連の起業家など経営者として成功している男性が多くいらっしゃいます。年代は40~50代が中心ですが、30代も珍しくありません。高級車でさっそうとあらわれ、自信に満ち溢れるその姿は男の私でもほれぼれするほど。さぞ、もてるだろうなとうらやましくも思います。
彼らが受診するきっかけはさまざまですが、重度のむし歯や歯周病で来院するような例はまず、ありません。「親知らずの痛み」や「歯ぐきからのちょっとした出血」など、軽い症状のうちにやってきます。実際、口の中もきれいなことが多いですね。
さらに感心させられるのは治療後の定期検診(メインテナンス)がいかに大事かという話にきちんと耳を傾けてくれる点。予約どおりにきちんと継続して来院されますし、歯みがき指導にも熱心に取り組まれます。しかし、これはあくまでも当院の場合です。そこで「エリートと歯」のかかわりについて、何か参考になる文献はないかと探してみたところ、「年収と残存歯数(歯周病等で失われずに残っている歯)」を分析した調査が見つかりました。
滋賀医科大学アジア疫学研究センターの三浦克之センター長らによっておこなわれた「NIPPON DATA研究」の一つで、厚生労働省の2010年国民生活基礎調査と国民健康・栄養調査に参加した全国の20歳以上の男女2891人を対象とした研究です。
この調査では対象者の平均支出を四つに分けて残存歯数を比較。その結果、世帯支出が下位25%のグループは上位25%のグループに比べ、残存歯数が少なく、そのリスクは約2倍も高かったことが明らかになったのです。