放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「音楽特番」について。
* * *
いつからだろう? 夏にも大型音楽特番が増え始めたのは。特番を見ていて、この業界で仕事しているからこそ感じることがある。
アーティスト一人、番組にブッキングするのは大変な労力がいる。ビッグアーティストとなるとなおさら。
まず、この手の大型番組だと、スタッフの気持ちとしては当然、ヒット曲を歌ってほしい。ただアーティスト側からすると、そうでもない人もいる。
新曲を歌いたい!という人も少なくない。いつまでも過去の曲の人と思われたくない気持ちもわかる。だけど、音楽のお祭り番組なのだからヒット曲だけでいいよ!と思う気持ちもある。
だからオンエアを見ていると、過去のヒット曲だけ歌ってる人、過去のヒット曲と新曲をセットで歌ってる人、時折、新曲だけ歌ってる人もいる。過去のヒット曲だけ歌ってる人は、そうやって割り切れる人か、もしくは「新曲を歌わせてほしい」と頼んだけれど様々なパワーバランスでそれがかなわなかった人。ヒット曲と新曲を歌ってる人は、「新曲も歌っていいけど、かわりに過去のヒット曲も歌ってくださいね」と交渉があって、そうなった人。新曲だけの人は、よほどのビッグで、過去の曲は歌わないけど、その人が出演していることに価値があると判断された人。と、そんなふうに見てしまう自分がいる。
そして出演順にもなかなか気を使う。トリは誰なのか? そしてまたぎは誰なのか?を僕なんか見てると気にしてしまう。「またぎ」というのは「8時またぎ」とか「9時またぎ」のことで、他局で番組が終わっても、長時間番組だと時間を「またいでいる」ので、そこがチャンネルチャンスとなり、視聴率の上がり時である。だから、「またぎ」にいいアーティストを持ってくることが多い。
またぎの作り方で、「今はこの人が視聴率が上がる」とか、時代と局の精神が見えたりするからおもしろい。テレビには毎分視聴率というものがあり、1分ごとの視聴率が折れ線グラフになっているのだ。これはある意味とても残酷なものである。特に音楽番組においては。