死者・行方不明者200人を超えた西日本の豪雨。宴会に興じながらも「全力で取り組んできた」と強弁する安倍首相。だが、今回の被害は自民党利権で歪んだ治水対策のため、拡大した。実はがんになるより高い豪雨発生率。ハザードマップの限界も指摘される。自衛手段はあるのか……。
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気象庁が異例の会見を開き、「記録的な大雨になる恐れがある」と注意喚起した5日夜、衆院議員宿舎で安倍晋三首相、小野寺五典防衛相など閣僚含む40人以上の自民党議員らが酒宴に興じていた。安倍首相らは「発災以来、全力で取り組んできた」「指示を出していたので特に支障はない」などと居直ったが、「緊張感が足りない」と野党から批判があがる。危機意識が薄かったのは明らかだ。
「地震と同様、今回のような大雨はいつどこで起きてもおかしくない」
こう警鐘を鳴らすのは、気候学を専門にする首都大学東京の藤部文昭特任教授。近年、統計的に大雨が降る回数が増えており、今回は長い期間、広範囲にわたり降り、普段は雨が多く降らない瀬戸内地域で被害が出たことに特徴があるという。
「『数十年に一度の大雨』と言えばめったにないことのように聞こえますが、例えば50年に一度といえば、確率は年2%です。これは60歳の男性が1年間にがんになる確率よりも高い。常に備える必要があります」
広島市や岡山県倉敷市などでは土砂崩れや河川の氾濫が起こり、多くの住宅が被害にあった。被害にあった住宅には、比較的新しく見える家が多い。なぜこれほどまでに住宅地が被害にあうのか。
「歴代の自民党政権の不作為が招いた側面がある」と指摘するのは、前滋賀県知事で環境学者の嘉田由紀子氏だ。知事を務めていた2014年に「流域治水推進条例」を定めた。大きな河川だけではなく、農業用水路などを含む浸水リスクを県が調べ安全度マップをつくり、不動産取引などで活用している。
「条例を制定する際、自民党県議や市長らが『地価が下がる』と猛烈に反発した。旧地主層とつながりが強いためです。この構図は全国どこにでもある。高度経済成長以降、災害リスクがあることを十分に知らせず、危険な土地に住宅をつくり続けてきた。そのツケが今、回ってきていると思います」