帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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コレステロールは本当に悪者なのか(※写真はイメージ)
コレステロールは本当に悪者なのか(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「脂質異常症」。

*  *  *

【ポイント】
(1)コレステロールは本当に悪者なのか
(2)がん治療にとっては悪者ではない
(3)脳にとってもコレステロールは重要

 生活習慣病への関心が高まるに連れて、コレステロールや中性脂肪の値を気にする人が増えました。血液中のコレステロールや中性脂肪が異常値を示す疾患を「脂質異常症」といいます。昔は「高脂血症」といっていましたが、呼び方が変わりました。コレステロールの値が高いだけでなく、低いことも問題になるということでしょう。

 中性脂肪やコレステロールの値が正常範囲にないと、動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。動脈硬化の原因になるぐらいだから、脳血管性の認知症と関係があるということは、考えられます。

 しかし、アルツハイマー型認知症を含む、ほかの認知症とはどういう関係なのでしょうか。その結論はひとまず置くとして、私はどうも、コレステロールが悪者にされすぎているように思います。

 コレステロールはすべての細胞膜を構成する成分です。これがなかったり、少なかったりすれば、細胞膜は機能をはたすことができません。私が長年、専門にしてきたがんとの闘いでは、コレステロールは重要です。がんに対抗する免疫細胞の細胞膜にコレステロールが不足していれば、十分に機能できないからです。

 実際、ハワイの日系移民を対象にした調査では、コレステロールの値が低いとがんの発症リスクが高まるという報告があります。私の経験からいっても、がんの患者さんの多くは、血中のコレステロール値が低いのです。

 健康志向が高まることによって、健康診断の結果に一喜一憂する人が増えています。しかし、健康診断で示されるコレステロールなどの値はあくまで目安なのです。私の印象で言えば、コレステロールが今のように気にされだしたのは、メタボリックシンドロームという言葉が広がってからではないでしょうか。しかし、それは騒ぎすぎだったように思います。別の機会に肥満と認知症についても触れますが、私は少しメタボの方がかえって体にいいと考えています。

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