■楽観的な気持ちになった抗がん剤治療とその効果 

 遠隔転移のある私にとって残された唯一の手段「抗がん剤治療」が早速開始された。診断結果がでた7月から、「アブラキサン+ゲムシタビン」を週に1回投与し、3週間連続して1週間休む。これを1コースとして、当初6コースが予定されて投与が開始された。
 
 この組み合わせの抗がん剤投与を基本とし、1年半継続することになった(途中で服用薬TS-1を1カ月半試みたが、副作用が強くて効果がないので断念した)。この間に必ず、毎月初めに腫瘍マーカーの「CA19-9」が測定され、3カ月に1回、CT(コンピューター断層撮影)検査でがんの進行具合が確かめられた。8回(つまり2コース2/3)の抗がん剤を投与後、10月に入ると劇的にがんが縮小し治療の効果が表れだした。

 約4.8センチのすい体部のがんは約3.0センチに縮小し、がん発覚時に975.4であったCA19-9の値(37以下が正常値)は、23.7まで低下もしていた。肺への多発転移は変化なかったが、リンパ節への転移においては少なくとも画像上は消滅した。

 この結果を見た私は、すっかり自分のがんの先行きに関して楽観的になってしまった。これからもがんはどんどん縮小し、全く問題なくなるのではないかと、前途洋々たる思いを持った。これがいかに甘かったか、その後のがん病状の変化から嫌というほど思い知らされた。

 抗がん剤治療に一定の効果があったということで、ゲムシタビン単体の投与に切り替えた。4カ月ほどは有効であったが、次第に腫瘍マーカーが上昇しだしたこともあり、アブラキサンを再使用することにした。私の場合、アブラキサンがよく効くようで、この投与により、腫瘍マーカーも再び低下し始め、がんが発覚した1年半後の2017年末まで、ほぼ問題なくがん生活は順調に推移した。

■「何が有効なのか」。先行き不透明になった抗がん剤治療

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